top of page

叔父の骨から学ぶ

執筆者の写真: 安田ヨウコ安田ヨウコ

先週、叔父が亡くなった。


生前、たまに会いにいくと、アレクサンダーのワークをさせてもらった。

アレクサンダーのワークは「学び」だけれど、

叔父は学びたそうではなかったから、

私が勝手に自分の学びのためにハンズオンワークをした。


後の方になったら、もうワークという感じではなくて、

ただ手を置かせてもらっただけだった。

私と同じで腎臓が弱かったので、

そのあたりに手を置くと手の熱が背中の中に

ごおっと入っていくようだった。

気持ちいいねぇと言ってくれた。


起きられなくなってからは、手の平を揉んだり、

膝をなでなでしたものだった。

叔父はいつも、あー、きもちがいいねぇと喜んでくれた。



その叔父の告別式でびっくりしたことがあった。

お骨がたくさん残っていて、

係の方も驚いていた。

80半ばなのに、40代の骨のようです、と。


係の方は主な骨を説明してくれる。

大腿骨の膝も股関節側の丸い骨も残っている。

腰椎などは、普通はなくなってしまうのに、骨髄まで白く残っている。

そして、粉になっている部分がとても少ないから、

カルシウムをしっかり含んだ骨だったことがわかると。


説明はされなくても、

肋骨、肘の関節、脊椎もそれとわかった。

そして、私は叔父に教わっているんだと思った。

解剖図でみている骨の、本物を見せてくれているんだと。

亡くなってまで。


お坊さんの形をしている首の上から2番目の骨、第二頸椎。

そして、残っているのは珍しい1番上の骨、第一頸椎。

お坊さんの形の骨の上に、第一頸椎を乗せる。

袈裟に例えらますと言って。


私はもちろん、トップジョイントと呼ばれる第一頸椎の上の

小さなカップ型の2つの関節面を見た。

本当に豆のような形の凹なんだな。


下顎、上顎、そして頭蓋。

頭蓋の裏を見せてもらう。

数々の突起もきれいに残っている。

トップジョイントの頭側の2つの凸も・・・。

首の骨と頭の出会うところがはっきりわかった。


はじめは1個の卵から始まった86年の人生の中で、

叔父はあの骨を、何もないところから作り、

育て、使ってきたんだ。

この骨たちはずっと更新されながら

叔父を支えてきたんだ。


自分の身体を作りづづけ

何十年も生きていくことの驚異。


骨や筋肉のことを紹介する。

これまでは、ただ身体を学ぶことは面白く

なるほどと楽しむことができた。


今から、もっと深く体験して、

学んで、知って、付き合ってゆこう。

1個の卵から私自身が作った私の身体。


その中にある骨が、

いつか燃え残って

外の空気に触れる時が来る日まで。


Comments


bottom of page