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  • 執筆者の写真安田ヨウコ

たのしい入院生活ー3 入院前の心配

初めて入院することになったとき、小さなひとつひとつのことに不安を感じた。


病気のボリュームが上がると、わたしという生命体を守っている外郭のようなものが、ヤワになってしまったようだった。

いや、逆なのかな?外角がヤワになったから病気になってしまったんだろうか?

ともかく、からだを包んでいる殻みたいなものが薄くなってしまう感じだった。


そのせいか、すーすーする。(笑) 

そして、元気だった時に気づかなかったような、小さな感覚でも感知するようになった。


埋もれていたアンテナがピコンと立ったような感じだった。

大自然の中で、小さな動物が、周囲の音や空気の動きやにおいを敏感に察知して身を守る、そんな感じ。何が一番大事なのか、迷わずすぐに分かる感じ。


五感は冴えた。例えば、久しぶりにイヤホンで音楽を聴いたら、音が直接心に突き刺さるようで、感動して涙があふた。


特殊なカメラで世界を映して、見えないものが見える超能者になったような・・・。

弱弱しいのだけれど、わたしにとっては、ある意味、とても興味深く貴重な体験だった。


実際、体調がとても悪かったり、不安におびえているような状態で感覚が鋭くなると、それだけ不安のボリュームが上がることにもなるので、のんきなことを言っている場合ではないのだが・・・。


また、全く逆のことも同時に起こった。

ある部分に関してはまったく感覚が鈍感になっちゃった。


生きるか死ぬか、治るのか、悪化するのか、という瀬戸際になると、

普段気にしている、ちっぽけなことはどうでもよくなるんですね。


そのおかげで、私の場合はかなり「せいせい」した。

自分の治療に専念せざるを得ないと、はっきりわかったから、

それ以外のことは気にしなくなった。


病気になるということは、周囲の人達に

「しばらく、わたしという生命体のお世話をすることに専念します」

ということを表明するチャンスなんだ。


ノンストップで毎日に追われていた私にとって、

それは神様がくれたありがたい時間だと思った。

ほんとにありがたい時間。


一番心配だった小さなこと

さて、入院前、

レッスンのお休みの案内、

代講を探したり(生徒さん、同僚のおかげですぐに了解してもらいました)、

家の中を片づけ、

ということはスムーズにできた。


一番心配だったのは、

入院中の洗濯と、着るもの!


何て小さなことなんでしょう!?

でも、そんなのどうにでもなる、と思えなかった。(笑)

ダンナや猫の心配より自分の洗濯物と着るものの心配かい!と思った。

友人に相談し、悶々と悩んだ。


しかし、あけてみたら、着るものは簡単だった。

病院によって違う思うが、入院セットというものがあり、

私のいた病院では、「ねまき(甚平)とフェイスタオルとバスタオル」がセット。

基本的に一日一枚ずつ、でも、汚れたりすると交換してもらえる。一日300円台。


寒い時はこっそりMとLの甚平を借りて重ね着をした。

自分で持ってきたトレーナーやねまき等を着ている患者さんもいた。

要は、自分や家族が楽で、気に入るやり方でよいんだよね。


毎日お洗濯してもらえる甚平を愛用していた。

毎日着るものに迷わず、困らない

というのはとてもありがたいこと。


そして、寝巻き姿で、誰にでも堂々と会えるというのは、

かなり稀有なシチュエーションだ!

自宅療養の時にも着たいなと思ったくらいの気に入り様。(笑)


洗濯はかなり悩んだ。

下着や靴下など毎日の洗濯をどうするか。


夫のほうが入院というケースだったら何も悩まなかったが、

夫に私の洗濯を頼むのはどうも気が引けたし、

だからと言ってわざわざ妹を実家から呼び出してというわけにもいかないし、、、


病院にきっとコインランドリーがあるだろうけれど、

そこへ行ける体力が果たして自分にあるのだろうか?

きれいなコインランドリーなのだろうか。

などと、考えて、困った。


細かい話だが、病院でブラジャーをつけるべきか?等 (笑)

ネットで検索すると同じような悩みをみんな持っていて、

体験談などがシェアされていて、参考になった。


もちろん病院には洗濯のサービスもある。

パンツ一枚100円とか、高価ですがまあ、背に腹は代えられないでしょう。


結局、私の場合は夫に頼むことに。

毎日洗濯物を渡して、洗ったものを持ってきてくれた。

ありがとう。


しかし、洗濯なんて言う、たったそれだけのことを、すごく悩んでいた。


ヤワな私は自分で思うより清潔を望んでいるのだなと気づいた。

そういうことが自分にとって大事だということを今まで知らなかった。

ほこりじゃ死なない。3日くらい同じもの着てたって大丈夫だと思っていたのに、

ヤワな自分はそうはいかなかった。



入院のイメージ


入院とは、出られるかわからない牢獄にはいるようなものだと思い込んでいた。


自由を奪われ、患者その1として扱われるのではないかと、


私という存在より、病気が主役の人生になるんではないかと、


プライベートが全くない、暗く冷たく殺伐としたところに留められ


痛い検査や、怖い治療に耐えなければならなくて、


腎臓のために、これからずっと味のない物を食べることになるんだって、


そう思って、気持ちが暗くなっていた。

家から一歩も外に出たくなかった。(笑)


とんだ勘違いだった。

入院のイメージは、私が勝手に作った思い込みだということが、

実際に入院してみてわかった。


明るくて、心地よいスペースで、のびのび暮らした。

痛い検査も、アレクサンダーテクニークを使うよい機会だった。

達成感があったし。


食事はとてもおいしかった。暖かくて心がこもっていた。

先生たちも病気ばかりでなく私と対話してくれた。


看護師さんたちとお話しするのも楽しかったし、

同じ部屋の人で仲良くなる人も少しはいたし、

私は入院生活を満喫して、幸せだった。


入院する前の私に言いたい

「大丈夫、心配いらないよ。

 わたしは幸せな時を過ごせるし、

 検査も治療も良い体験だよ」

って。


これから入院する方がみんなそうだったらいいと思うけれど、

同室のみなさんはそれぞれ大変な思いをしていた。

私のようなのんきは珍しいのかもしれない。

でも、少しでも「ふつう」の状態の時があったら、

自分がどんなことを欲しているか、感じ取るいい機会かもしれません。

小さなわがままを聞いてあげる。自分を大事にする。

そのことは案外、これから始まる治療の後押しになると実感している。


写真、なんだかわかりませんよね?フード付きのもこもこショールをかぶって、アイマスクをして昼寝をしようとしているところ。おかしな人ですよね。でも、こうしたかったからこれで快適に昼寝できました。夜は薬の影響でほとんど目が覚めて眠れなかった。 看護師さんに、ベッドの向きを窓が見えるように逆さにしてもらいました。わがまま聞いてくれてありがとう。



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