• 安田ヨウコ

クアラントット(Quarant'otto)のこと

2017年の秋に病気になった頃、わたしの「こころ」は知らぬ間に隅っこに追いやられ、お日様が当たらない部屋に閉じ込められていたような気がする。


好きなことを仕事にしていたのに、(こころとからだを楽にする仕事だよ?)

達成感や、充実感もあったのに、(いろんなところで教えていたよ?)

いつの間にか一番大切なものを見失ってしまったのかもしれない。


なぜって、私の頭の中は「~までに~をしなくちゃ」とか「~こうあるべき」とか「~に、ならないように」ということばかりだった。そういう動機で動いていた。


例えば、明日は何時からレインボーラボで個人レッスンで、夜はどこどこに教えに行き、その間にワークショップの準備を「しなくちゃ!」って思っていた。家族関係のこともみんな「~しなくちゃ」で考えていた。幸せだったけれどいつも忙しくて「しなくちゃならない」ことだらけだった。行動やモノを選ぶ基準は「どうすべきか」「どっちのほうがより効率がよいか」「どうすることが賢いか」ということだった。


それのどこが悪いの?って思う人もいると思う(^^)。 でも回復した今、わかる。 わたしは自分のこころに「本心」を尋ねることをずっと忘れていたんだよね。

ほんとうは、なにが心地よい?

ほんとうはわたしにとってなにがイエス?

ほんとうはわたしはどうしたいの? って、聞くことを省いてしまっていた。外部のことを優先し、自分のこころは後回しだった。そして日々の流れの中で、仕事や楽しみさえも「なんとかこなす」ことを考えていた。


☆彡


病気がわかって一番落ち込んでいたとき、病気の心配よりも、むしろ、治ったとしても、そのあと生きていく活力がない自分に気づいてはっとした。正直に言えば「生きていてなんになるのか」と思ってしまった。(こんな考えを持ってりゃ、病気にもなるよな!)と苦笑いした。


そんなとき、気持ちをガラッと変えてくれることがいくつか起きた。


その一つは、クアラントットというジュエリーとの出会いだった。普段めったに見ない新聞をたまたま整理していたら、朝日新聞のトップランナーのページに目が留まった。伏見愛佳さんというジュエリーデザイナーの記事だった。目が釘付けになった。


「マーケティングからは0から物を作り出せない。感性を信じて、他を見るのを一切やめた。」というようなことが書かれていた。その作品を見ると、おどろいた。夢に見た物語のような素敵な世界がジュエリーという形で具現化されていた。いつまでもじっと見つめてしまうような指輪。ウォール・ストリート・ジャーナルにも取り上げられたらしい。


お店のウェブサイトで、作品を次から次へと夢中で眺めた。すてきな作品の画像をダウンロードしてうっとり眺めて、癒された。

一つ一つの作品に詩のような言葉がついている。ラテン語の言葉がそのままデザインされたもの。これを身につける一人一人の、それぞれの生き方や性格や思いに寄り添うストーリーのあるジュエリー。デザイナーも職人もスタッフもみんなが大事に愛を持って仕事をしている。 わたしが現実化したいことに似たものを感じた。一人一人のストーリー。

これらの指輪をしている自分を思い浮かべると、久しぶりに こころにぱぁっと陽が差したようだった。


(よし!退院したら、このアクセサリーを身につけるんだ!)と思ったら、久しぶりにやる気ができてきた

元気になったわたしがクアラントットの指輪をしてるところを想像する。周りの人が

「わあ、素敵な指輪してるね!」と気づいてくれる。

「クアラントットっていうお店の指輪なの。この指輪はこういう名前でこんなメッセージがついてるんだよ」と、話す。とか、


出会う人、出会う人、大好きになった人たちに、その人にぴったりの言葉がついたジュエリーをプレゼントしたい!などと、妄想しながら一人しあわせな気持ちになった。


落ち込んでいたところから、(病気になったのだから、これはチャンスだ。今までと違った生き方をしよう。これからは、これまでよりもっと、自分のこころに正直に生きていこう。本気で生きていこう!)と思うきっかけを得ることができた。


やる気が出たことを誰かに伝えたくて、夫に「退院したら、このお店に行ってペアの指輪を奮発して買おう!」とLINEした。実際問題、保険にも入っておらず、長く仕事を休んで入院し、いつ復帰できるともわからないのだから、そんな悠長なことをいっている場合ではなかったのだが、実際にそうなるかどうかは関係なく、そう言ってるだけで、こころには希望の光が差したのだ。


退院してやっと外に出られるようになり、そしてやっとまとまった仕事を引き受けた時、これが終わったら、ほんとに指輪が買えるかも!?と思った。


GINZA SIXのお店をはじめて見に行った。店員さんが一つ一つのジュエリーの説明をしてくれるのを聞きながら、画像で見ていた作品を間近で見た。きっと目が♥️になっていたに違いない。買わないんですけれど、と言って何度も見に行った。その度こころがウキウキした。


仕事が無事終了した頃、だいぶ元気になり日常が戻ってきた。いざ、そうなると、頭の中の声が(今ほんとにジュエリーが必要なの?)と問いか